その後、ユングはフロイトを正当に評価し、その無意識層の感情の高まりが、魂を高いレベルの「聖なるもの」へ向かわせると思考を発展させました。しかし、「無意識」に対する見解は、フロイトとは真っ向から対立しています。ユングは、無意識層は崇高なものであり、過去も未来も知り、自分の進むべき「道」も示してくれる「全知全能」のものです。「神」と呼ぶべきものに近い概念だと論じました。このことは、当時としては、かなり勇気と確信のいる発言です。ユングは学会での自分の名声や地位をものともせず、自ら信ずる理論を語りました。その結果、ユングは神秘主義者のレッテルを張られてチューリッヒ大学を追われ、学会から抹殺、隠遁生活に入ることになります。別荘で気ままに、「易経」の研究や、ヨーガ、瞑想、禅などに明け暮れ、さらに東洋哲学に対する理解と「無意識の原理」への確信を深め、悟りに至ります。そして「無意識」は個人のものではなく、「あなた」も「私」も「過去」「現在」「未来」も、すべてが混然一体となっている「集合的無意識」という思想が確立しました。

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